上演中の劇団四季の『ゴースト&レディ』を観てきました!昨日、名古屋、大阪公演も発表されたらしいですね。
目次
あらすじ
以下、ざっとしたあらすじを。
19世紀ヴィクトリア朝のイギリス。貴族階級のフロー(フローレンス・ナイチンゲール)は、若き頃から看護婦になることを志す。従軍看護婦として働くことが決まったフローは、ドルーリー・レーン劇場に棲みつくゴーストであるグレイに「絶望したら、私を殺してほしい」と頼む。フローの任務先であるクリミアの戦地病院に向かう2人だったが、そこで待ち受けていたものとは…。
詳しくは、公式HPをご覧ください。
ミュージカル『ゴースト&レディ』作品紹介 | 劇団四季【公式サイト】 (shiki.jp)
全体的な感想
端的に言うと個人的にあまり好きではない作品でした。
好きな点は、演出、衣装。
好きじゃない点は、ざっくり言うと脚本…です。
※以下、ネタバレありの詳しい感想を書きます。
※プラスの感想よりもマイナスな感想の方が多いです。
※ちなみに、感想を述べている者の前情報は以下の通りです。
- 原作漫画未読(同作者の他作品も未読)
- 医療従事者ではない
- 医療従事者を志したことがない
- ナイチンゲールに造詣が深くない(フィレンツェで生まれたからフローレンスと名付けられたこと、貴族階級出身であること、「クリミアの天使」と呼ばれた看護師…ぐらいしか存じ上げません)
個人的に好きな点
まずは、プラスの感想から。
演出
白い布で雪が降り積もった地面を表現していたのが印象的でした。
観劇前にSNSで最後にランプが天井からいくつも吊るされる演出がすごいと投稿されている方が
多かったんですが、私としてはランプの演出より雪の演出が心に残りました。
その他、人が横たわって亡くなる時に霊が起き上がって歩き出す演出がすごかったです。
2階席から観て仕掛けは何となくしかわかりませんでしたが、凄かったです。
ただ、夜の患者の見回りに向かうフローが男性2人に襲われる場面の演出は苦手だなと思いました…。
1人がフローの首元近くに馬乗りになって、もう1人がフローのドレス脱がそうと下半身まさぐるんですが…(間違っていたら、すみません。少なくとも私にはそう見えました…)
観ていてきついなぁ…と思いました。
衣装
レッラ・ディアッツさんの衣装っておしゃれですよね。
ヴィクトリア女王の白いレースのドレスが個人的に1番好きです。
ドレス見るの好きなんです!やっぱり綺麗だから!(単純…笑)
ヴィクトリア女王の侍女の黒いドレスと頭につける白いリボンも素敵でした!
そういえば、レッラ・ディアッツさん、『ゴースト&レディ』の衣装合わせの記事でお顔を見せてましたよね。四季の衣装をたくさん手掛けてますが、今まで名前だけ知っていただけだったので、お姿を拝見するのが初めてでした。
最新ミュージカル『ゴースト&レディ』創作の現場より――技術製作レポート(衣裳フィッティング編)|最新ニュース|劇団四季 (shiki.jp)
個人的に好きじゃない点
次に、マイナスな感想を。
戦争色がまあまあ強い
これは完全に私の好みですが、戦争色強い作品が元々あまり好きじゃないんです。
戦闘シーンと国旗振って愛国心を謳って群衆を煽るシーンが苦手で。
ゴースト&レディでもそういう場面があって、あ、やっぱり私こういう場面観るの苦手だ…となっちゃいました。
物語の都合上、仕方ないですし、完全に個人の好みの問題です。
盛り上がりどころが不明
観ていてどこの場面に感情を持っていけばいいのかがわからなかったです。
盛り上がりどころがわからないんです。
どういうノリ、どういう姿勢で観たらいいのかがわからなくて、終演後は頭の中が「?」でいっぱいでした。
まず、フローとグレイの関係性がよくわからない。(恋愛的関係性?)
とにかくわからないまま進む。
でも、どこかで何かで観たことがある場面や展開が多いな…うーん…
あれ?いつの間にかフローが亡くなっていた。噂のランプ降りてきた。
というのが正直な感想でした。
全体的にインパクトに欠ける印象でした。
フローの「絶望」が不明(「絶望」ではなくないか?)
フローが絶望したらグレイが殺す、というのがストーリーの主軸なんですが…
フローの言う「絶望」って何?
観劇中も観劇後も思いました。
「従軍看護婦をやってどうしようもなく絶望したら殺してくれ」みたいなことをフローをグレイに向かって言うんですが、正直心の中で突っ込みました。
だから、その「絶望」って何???
舞台のオリジナルキャラである、アレックス(かつてフローの婚約者だった人)とエイミー(フローの後輩で従軍看護師)が結婚して戦地病院から去ると報告を受けた時にフローが「もう絶望したから殺してほしい」と再度グレイに頼むんですが…
「絶望」ではなく「嫉妬」「羨望」「悲しみ」が近い感情なんじゃないのかなぁと思いました。
フローが人生の選択肢から外した「家庭」へ入るエイミー。
家庭の中に閉じこもって夫と子供の世話に明け暮れる生活をするであろうエイミーが羨ましい。
表面的に自分のことを慕ってくれた後輩が去ってしまって悲しい。
また、かつての婚約者が後輩と…というのがまたねぇ。
(この設定要るのか?という個人的突っ込みはある。詰め込み過ぎ!何かメロドラマみたい…)
ただ、フロー、自分からプロポーズ断ったじゃん…とも思いました。
悪役のジョン・ホールに銃を向けられて「(私を)殺すなら今よ、グレイ!」ってフローは叫ぶんですが、頭の中が「????」でいっぱいになりました。
え、言うタイミングそこ…?
今殺されそうになっているのに…?
グレイは「自分がフローのことを殺したい。他の者には殺すことなどさせない。」みたいなことを言っていたけれど…
謎でした。
史実の「強い女物語」のワンパターン化
「史実の強い女(少なからず劇中では”強い女”であるかのように描かれる)」の半生や人生を辿る映画や舞台って多いから、そこはワンパターン的だな…と観ながら思いました。
彼女は聖女か、悪女か、魔性の女か…とキャッチコピーで謳われて。作中であばずれだ、女のお前は引っ込んでろ!と父親や夫に言われ、彼らに反抗し、後に世間に影響を与える強い女。
(この文章を読んでいる皆さんも、何作品かは思い浮かぶことでしょう…。)
「強い女物語」に私自身飽きてしまっていることもありますが、それを抜きにしてもフローと同じ性別の1人として思ってしまいます。
「強い女」ブームをいつまで続けるんだ?いつまで続くんだ?現世にいる女は「強い女」でいないといけないのか?
男社会にフルコミットしたり、女社会で指揮とったり、別の女と結託したり、男に歯向かったり立ち向かったりする「強い女」でないとやっていけないのが私にはきつく感じてしまう。
虚勢張ったり、主張したりしないとすぐに消えゆく存在になってしまうことがきつい。
365日24時間、休みなく動き続けて何かと戦っているみたいで…ずっと銃を持ち歩いて就寝時にも肌見放さずそれを持っているようで…私は心苦しい。
(もちろん男性には男性のきつさがいくつもあると思いますし、男性のきつさには女性のそれとは違った根の深さがあるように思います。)
SNSを見てたらエイミーが好きになれないみたいな投稿を多く見かけたんですが、私は反感を抱きませんでした。
ある意味リアルなキャラだなと思いました。
包帯を上手く巻けずに先輩から怒られたり、苦しんでいる患者を前にどう動いたらいいかわからないから立ち尽くしたり…。
エイミーがフローに「夜も眠れないんです」と打ち明ける場面があるんですが、
そりゃ、向かない仕事しているから…
向かない仕事って病むよね…
あと、閉鎖的な空間と雰囲気も病むよ…
と私は観ながらエイミーに感情移入していました。
「閉鎖的な空間と雰囲気」というのは、非医療従事者の私が病院に対して勝手に抱いている印象で、たまに患者として病院に行くと思うことなのです。
病院って学校みたいな雰囲気っぽそう…。
病院と学校の類似点を取り上げると以下のものかな、と思います。
- 非営利団体である。
- 何となく「お堅いイメージ」がある。
- 組織内では「先生」と呼ばれる人が指示を出して、「先生」以外の人が「先生」の指示に従って動く。
- 従業員は基本的に1日ずっと同じ建物内の場所に居続け、内部の従業員と業務を行う。
この構造がものすごく学校のクラスに似ているような気がします。
看護師って包帯巻いたり、注射打ったり、手先の器用さが求められる職種でもあるし、そこのところ如実に適性が分かれそうですよね。
あと、手先の器用さ以前に女社会だから女社会に不向きな人には続けるのが難しい職種だろうなと非医療従事者の私は思います。
特にエイミーみたいな人、お局からいびられちゃいそう…。。。
フローが個人的に好きになれなかったのは、私にはフローが「女社会の長」であるかのように見えたからかもしれません。
(私自身が女社会に苦手意識を持っているのも相まって、女社会でバリバリやっている人には複雑な感情を抱いてしまう…というのはあります。)
まとめ
プラスの感想よりもマイナスな感想の方が多かったのですが、知られざるナイチンゲールの人生を知られて勉強になりました。
円グラフを用いて病院の死亡者数表すのは高等教育の賜物なのではないかと思いましたし、90歳まで生きられたのも幼い頃から栄養価の高いものをたくさん食べて育ったからなのではないかと思いました。
終演直後の正直な感想は、やっぱりナイチンゲールって貴族のお嬢さんなんだなぁ…でした。
「強い女物語」は個人的にモヤモヤする部分もありますが、医療関係の史実の女性なら女性で初めて医師免許を獲得して医者になったエリザベス・ブラックウェルを主軸とした作品を観てみたかったかも…とちょっと思ったり。
(ナイチンゲールと時代被りますよね。彼女も裕福な家庭出身ですが…)
あるいは「男性で初めて看護師になった人の話」とか「男性で初めて保育士になった人の話」とか面白いんじゃないかなぁ。
パイオニアじゃなくていいから「女性の画家」とか「女性の作家」とか「史実の人物語」だったら探せばたくさんありそうな気がします。
有名人であっても映像化舞台化されていない人たちは多いので(書籍化はされても映像化舞台化は少ないことは結構ある)、そういった方々を主軸にしたストーリーもいいんじゃないのかなぁ。
個人的にはムンクやモンゴメリが興味深い人生模様だと思います。
ただ、結論としてはやっぱり私は願わくば「強くも弱くもない女」「強くも弱くもない男」の物語が観たいです。