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なぜラウルと衛兵の間にコミュニケーションエラーが生じたのか?
ラウルと衛兵の間に「ファントムに発砲するタイミング」の認識の違い(コミュニケーションエラー)が生じたのでしょうか?
一言で言うとラウルが言葉足らずで説明が下手だからだと考えられます。
しかし、ラウルは自分が説明下手であるとは思っておらず、むしろ自分は説明上手だ!とすら思いこんでいそうです。(自分は説明上手であると思い込んでいること自体が厄介ですよね…。)
では、ラウルの台詞のどの部分が言葉足らずで説明が下手なのか分析してみます。
ラウルが説明下手な理由①指示代名詞(こそあど言葉)で指示を出す
ラウルの衛兵に対する指示を振り返ってみましょう。
「その時が来たら撃て!」
「ばか者!”その時が来たら“と言ったろ!」
ラウルの衛兵に対する言葉は、いずれも指示代名詞(こそあど言葉)なんですよね。
指示代名詞は話し手と聞き手(あるいは書き手と読み手)の双方どちらも認識している事項でないと一切通じません。
共通認識ができていない状況であるのに指示代名詞を用いて説明することは、説明が下手な人がやりがちです。(例えば、「これ、やっといて~!」「あれ、取って~!」と普通名詞や固有名詞を言わずに指示を出すのです。「これって)
「その時っていつですか?」と聞き手が深掘りして聞いても、話し手からは「いずれわかる」と曖昧な返事しかもらえないのです。聞き手は具体的なことは何も知ることはできないのです。
具体的なことを何も知ることができないまま動くしかない状況は、聞き手にとってはとても負荷がかかります。
なぜなら、話し手が聞き手の想像力と判断力に完全に頼り切っているコミュニケーションだからです。
話し手が何も具体的な指示を出さないため、聞き手自身の判断に委ねるしかないのです。
『オペラ座の怪人』のオペラ『ドンファンの勝利』開演前の場面では、ラウルは衛兵の想像力と判断力に完全に頼り切ったからこそ、ラウルと衛兵の間に「ファントムに発砲するタイミングの認識の違い」(コミュニケーションエラー)が生じたのです。
(コミュニケーションエラーを引き起こしたとも言えるのでしょう。)
ラウルが説明下手な理由②責任を持ちたくない(自分で決断したくない)から
曖昧な言葉を多用する人の特徴だと私は思いますが…
責任を持ちたくない(自分で決断したくない)から曖昧な言葉を言うのではないでしょうか。
ラウルが責任を持ちたくない(決断したくない)と思うのは、「ファントムが怖い」とか「ファントムにクリスティーヌを奪われてしまうのでは…」とか内心自信がないからかもしれません。
まとめ ラウルは説明下手かつ責任を持ちたくないから、衛兵に曖昧な指示を出した
結論としては、ラウルは説明下手(指示代名詞を用いての指示)かつ責任を持ちたくないから、衛兵に曖昧な指示を出すのだと私は思います。
ラウルのような人って世の中にたくさんいますよね。ラウルはリアルなキャラクターだと思います。